2007/11/11

摂州合邦辻


先月は歌舞伎座の昼夜と国立劇場を観た。どちらも楽しかった。とりわけ歌舞伎座夜の部「牡丹灯籠」と「奴道成寺」、国立劇場の「うぐいす塚」が印象に残っている。
昨日は『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部を見に歌舞伎座へ。
吉右衛門は好きだが幸四郎というのは世にいわれるほどの名優なのだろうか。先月国立で見た俊寛も今ひとつピンとこなかった。片岡仁左衛門のまことにもって素晴らしい男っぷりにはほれぼれしてしまう。
車中のお供にディーバーの新作を持っていったのだが、幕間に斜め前の人がパラパラめくっている本が同じものだった。
今日は国立劇場へ人間国宝坂田藤十郎の『摂州合邦辻』を見に行く。地下鉄に乗り換えようと新橋で下車したら本降りの雨。国立劇場までの距離を考えれば傘は必要だ。道の向こうのドラッグストア即調達し地下鉄で移動。現地に着いたら雨など気配もない。そのまま大事に持ち歩いて、結局帰りの電車に置き忘れたorz。
で、坂田藤十郎は凄かった。先月の歌舞伎座でも大した風格だったが、『摂州合邦辻』の激しく生々しい情念の表出には年齢を感じさせないエネルギーと色気が漲っていて、人間、歳取ったら枯れるなんてことは嘘だと思わせるほどに脂がのりきっているようだった。大詰めで明らかにされる事の真相に、世界の様相をガラリと変化させるどんでん返しのダイナミズムとカタルシス。
前日の美味いところだけを手際よく振る舞われたような、顔見せの楽しさは楽しさとして、じっくり語る通し狂言の歯ごたえと人間国宝の旨味を、今日はたっぷり堪能させられた。