2010/01/05

09年のまとめ 舞台編


1月
歌舞伎座 昼 俊寛 花街模様薊色縫 十六夜清心 鷺娘
国立劇場 象引 十返りの松 甫競艶仲町
紀伊国屋 しとやかな獣 (ケラリーノ・サンドロビッチ) 

*鷺娘(玉三郎)が印象に残った。
*いきなりオッパイ鷲掴みにされた緒川たまきにびっくりしたら公演後ケラと結婚。納得した。 
2月
コクーン パイパー(野田秀樹)

3月
歌舞伎座 昼 元禄忠臣蔵(刃傷 評定 綱豊卿) 
       夜 元禄忠臣蔵(南部坂 仙石屋敷 最後の一日)
赤坂ACT 蜉蝣峠 新感線

*元禄忠臣蔵の通し 綱豊卿の仁左衛門が実によろしかった。 
*蜉蝣峠 立ち回りで最高の頑張りを見せた堤真一は良かったが、クドカンの脚本は下世話でスケールに乏しく面白みに欠けた。

4月
歌舞伎座 昼 先代萩
        夜 毛谷村 郭文章 曽根崎心中

*先代萩 玉三郎の政岡は情より知がまさる感じでもう少しふくよかさが欲しかった。
   
5月
歌舞伎座  夜  毛剃 夕立 神田ばやし 鴛鴦襖恋睦
新橋演舞場 昼 金閣寺 心猿 近江のお兼 らくだ

*馬の引き抜きなんて思ってもみず、茶色の馬が白に変わった近江のお兼にはびっくり。

6月
鎌倉芸術館 トワイライツ (モダンスイマーズ)
国立劇場   華果西遊記 

7月
コクーン   桜姫(現代版)
歌舞伎座  昼 五重塔 海神別荘
鎌倉芸術館 松竹大歌舞伎 東コース

*海神別荘の玉三郎と海老蔵のオーラ、美しさが格別だった。夜の「天守物語」のチケが取れなかったのが残念至極。

9月
歌舞伎座 昼 竜馬がゆく 時今也桔梗旗揚 お祭り 河内山
       夜 浮世柄比翼稲妻 勧進帳 松竹梅湯島掛額
日生劇場 ジェーン・エア
平塚市民s 清水ミチコ トーク&ライブ
 
*ミッちゃん最高!

10月
コクーン  コースト・オブ・ユートピア
国立劇場 乱歩歌舞伎Ⅱ(京乱噂鉤爪)
歌舞伎座 昼 毛抜 蜘蛛の拍子舞 河庄 音羽獄だんまり
       夜 義経千本桜(渡海屋 大物浦 吉野山 方眼館)
演舞場 蛮幽記 新感線
銀河劇場 組曲虐殺(井上ひさし)
  
*悪逆非道な人間豹がいつの間にか憂国の士に。人間豹を龍馬にしてどうする。乱歩と司馬遼の区別もつかない乱歩歌舞伎Ⅱ最低。
*文句なしに面白かった「蛮幽鬼」。中島かずき、いのうえひでのりは日本一の作、演出家。
*小林多喜二の生涯を重くならず軽やかに。悲劇を描いて明るく楽しい舞台にしてしまう井上ひさしに刮目。本年屈指の名作「組曲虐殺」
  
11月
歌舞伎座 昼 仮名手本忠臣蔵(大序 三 四段目 道行) 
    夜 仮名手本忠臣蔵(五 六 七 十一段目) 
コクーン 十二人の怒れる男
       
*蜷川演出の「十二人の怒れる男」俳優達の熱演も含めて、シドニー・ルメット作品の素晴らしさを再確認。

12月
歌舞伎座 昼 身替座禅 野崎村 大江戸りびんぐでっど
国立劇場 修善寺物語 頼朝の死 一休禅師
コクーン  東京月光魔曲
 
*「大江戸りびんぐでっど」クドカンの新作歌舞伎。新聞などでは毒気が強く歌舞伎座の客に合わないなどと叩かれていたが、時代に即した内容と真当な批評性を取り込んだ物語に遊び心あふれた見せ場を配して世話物にまとめた意欲作で楽しく面白く客席も結構な盛り上がった。
*国立劇場も新歌舞伎を上演していたが、陰気で重苦しい演目は役者さんたち熱演だが楽しめなかった。
*「東京月光魔曲」ケラの新作は新年のカウントダウンも楽しめるいろいろ趣向を凝らし、豪華キャストの大作。色と欲とで振り回される男女のとりとめのない話を耽美5、喜劇3、猟奇2ぐらいの配分で語っている。耽美と喜劇は両立し難くあるが、松雪泰子とともに耽美方面を受け持った瑛太が凄くカッコよく、立派に重責果たした。喜劇方面を受け持った大倉孝二は可笑しさに哀感漂わして味わい深い。伊藤蘭ちゃんは勿体無い使われ方で実に残念。

2010/01/01

2009年 映画のまとめ

09年に劇場で見た65本(邦画15本)その中からとても楽しめた10本 順不同

ザ・バンク 堕ちた巨像 
グッケンハイム美術館にカメラが入ったんだと物珍しく眺めていたら、いきなりの激しい銃撃戦であっという間にギャラリーがズタボロになったのが強烈なインパクト。でネットで全部セットを組んだのだと知り納得。作り手の意気込みが作品を厚くする。それを抜きにしても脚本演出役者全て水準を抜いている。

ウォッチメン      
アメリカンなヒーロー像を辛辣に解体しながらも理想主義に含みを残す。素っ裸で青く輝くDrマンハッタンの時代に、ロマンティックな故に哀感ただよってしまうロールシャッハの貧乏ったいハードボイルド振りは泣けた。

007 慰めの報酬

96時間

くもりときどきミートボール3D  
集団的自衛権を行使するジャンクフードが空を覆い尽くし、ピザやフライドチキンが襲来する。思いっきりシュールな悪夢。今日性に溢れた素材に父と子の相克という普遍的なテーマで切り込んだドラマは大人にも通用する深みがある。過剰な可愛さで観客に媚びないキャラクターデザインも原色多用のポップな色彩も主張が明確で好感した。ボケたギャグもシャープ。これは意外な秀作なのだった。

グラン・トリノ     
「許されざる者」以降の作品は重さも陰気さも半端じゃなくて、面白いが2回見る気にならなかったが、この軽やかさはどうだ。主人公は自動車産業の栄光と共に、つまりはアメリカの栄光そのものを生きたことを誇りとする老人だが、その差別的言辞や苦々しさに歪む表情や独特の笑顔、そして何よりブラフのかけ方において、完璧にハリー・キャラハンであることに感動した。後日、オバマが{GMを救済」との報道に接した折には、老人がアメリカの伝統、文化を象徴する愛車のキーを有色人種の少年に託した場面が見事に重なり、老監督の視線の深さに改めて感じ入ったのだった。
ローハイドからマカロニ・ウエスタンへ転じドン・シーゲルと出会いマルパソカンパ二ーで独立し、ソンドラ・ブロックを経てアカデミー監督となるもB級扱いの偏見の壁は厚かった。そこから先の充実した仕事振りは他に比類がない。最晩年といえる歳に至ってなお、このような瑞々しさに溢れた豊穣な作品を連打するクリント・イーストウッドという名の驚異。
                   
イングロリアス・バスターズ
タランティーノの脳みそは過去に見た映画の記憶とこれから作りたい映像だけで出来上がっているのじゃないか。例えばドレスアップし入念にメークアップするメラニー・ロランをアップで捉えたシーンは「グライド・イン・ブルー」の白バイ警官が鏡の前で装備に見を固めていくシーン思い出させる。他にも至る所に色々な映画の記憶を喚起させるようなシーンが見られる。しかし一番の面白さは、農夫と大佐の会話に何故が緊張感が高まってゆく場面の観客をブラインドサイドにおいた演出の見事さ、かと思えば今度は逆に手の内バラしていつ発火するかとサスペンスを積み上げていく酒場のシーンの緊張と緩和のダイナミズム。ダイアン・クルーガーの足の包帯を心配する素振りから一気に狂気へと振れる大佐の意外性。ナチは悪でアメリカは善というような図式とも無縁に悪いヤツはドッチにもいるというのも説得的。嬉々としてバカをやるブラピがホントに馬鹿に見えた分、クリストフ・ヴァルツがより賢く見えたたものの、最後はきっちりと帳尻を合わせる。もうタランティーノ自由自在なのである。

アバター3D
3D元年と言われるほど普及し始めた今年。3Dで見たのは センター・オブ・ジアース モンスターvsエイリアン ハリーポッター・謎のプリンス ボルト くもりときどきミートボール ファイナル・デッド・サーキット クリスマス・キャロル カールじいさんの空飛ぶ家 アバター の9本。このうちで3D表現と内容とに必然性を感じさせる点においては、「ポーラー・エクスプレス」から「ベオウルフ」といちはやく3Dni取組んできたロバート・ゼメキスが「クリスマス・キャロル」で一日の長の余裕を見せつけた。立体表現といっても刺激としては要するにこっちに来るかこっちから行くかだけというシンプルさだ。だから見せ方には工夫なければ長時間の鑑賞はきつい。その点ロバート・ゼメキスの演出はよく計算されていたて。意外にも平板で面白さに欠けたのは「カールじいさんの空飛ぶ家」。これは内容も底が浅く暴力性が高く救いが無いなどがっかりさせる作品だった。これらの中でアバターはスケールも品質もケタ違いの3D映像で誠に見応えがあった。例えて言えば全編フランク・フラゼッタの絵がフルアニメで動いているような密度と迫力なのだ。ウーン、お話や設定には穴もあるが、とにかく革命的に凄い絵のつるべ打ちだ。

2012
絵の凄さでは2012も負けていない。ローランド・エメリッヒの映画を見たからって何がどうってこともないが、ローランド・エメリッヒがいなかったら、映画界の楽しさはきっと何割か不足してたような気がする。狂気に支えられた仕事のなんと魅力的こと。

this is it
思いがけなくマイケル・ジャクソンの魅力と誇りを持って自分の仕事をする男のカッコ良さをみせて貰った。



次点 スペル、バビロンA.D ベンジャミン・バトン ウォーロード 風が強く吹いている.


日本映画で印象に残ったのは「風が強く吹いている」「南極料理人」「劔岳 点の記」など。

ローマ字やカタカナ表記の時代劇は外人向けの異国情緒やCGに頼った絵作りなど、安っぽさが良く似ていた。
「沈まぬ太陽」はエアラインを舞台に人の生き方を問う内容でありながら、飛行機が飛ぶシーンがチープで嘘くさい。肝心要の絵をおろそかにしているから役者の熱演も空回りするようだった。だから、箱根駅伝のレースシーンを自然なリアルさで見せた「風が強く吹いている」が一層爽やかに見えた。
「笑う警官」は原作を読んでいたし、「ハゲタカ」で魅力的だった大森南朋主演なので見に行ったのだが、角川春樹の脚本演出に唖然とさせられ、途中からは、大家の義太夫を無理やり聞かされる店子のような気分になった。義太夫に比べたらこちらは金を取られた分より悲惨なのだった。
15本だけで言うのはおこがましいが、今や日本映画界は滅びへの道をひた走っているような感じがする。「ディア・ドクター」「空気人形」を見れなかったのは残念だが、見ていたとしてもこの印象は変わらないような気がする。多分