2009/05/01

レイン・フォール/雨の牙

都内全域に張り巡らされた監視カメラに映る暗殺者。ずらりと並んだモニターを前にしたCIAの東京支局長は名うての殺し屋を捉えるべく、やたらハイテンションで局員に激を飛ばす。より正確には口角泡を飛ばして怒鳴りまくるのである。スルリ、スルリと躱してゆく孤高の暗殺者ジョン・レイン。
なるほど、こりゃジェイソン・ボーンをやりたいのだなと了解した。しかし、支局長が何をそんなに大騒ぎしているのかがとんと伝わってこない。ゲイリー・オールドマンの熱演が痛々しいのである。柄本明の刑事も柄本明に頼りすぎたキャラだし、椎名桔平の暗殺者はヤバい雰囲気発散させ過ぎで全然プロらしくないのである。ヒロインの長谷川京子に至っては可哀相な事に、ほとんど馬鹿にしか見えないのである。どの人物もきちんと造形されていず、当然のようにストーリーは破綻している。とても格好悪い脚本を、やたら格好良く凝った映像で見せられるのだが、却って空虚さが増すばかり。ゲイリー・オールドマンと柄本明という名優をもってしても、この粉飾感は消し難く、まこと映画とは監督のものなのだった。

劇中、極秘データが入った「メモリースティック」が出てきて、それはどう見てもごく普通のUSBメモリーなのだが登場人物の誰もが、再三再四「メモリースティック」を連呼する。見ている時はとても違和感があったのだが、配給会社名に気がついて納得した。

監督・脚本:マックス・マニックス
原作:バリー・アイスラー
撮影:ジャック・ワーレハム
美術:山崎秀満
編集:マット・ベネット
音楽:川井憲次
出演:椎名桔平、長谷川京子、ゲイリー・オールドマン、柄本明、清水美沙
2009年:1時間51分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント