2010/04/12

「組曲虐殺」は良かった。

ここ数年、ステージの面白さに目覚めたにわか演劇ファンとして、井上ひさしは一般常識として押さえておきたい、といった浅薄な思いから「薮原検校」と[ロマンス」を観たのが2007年だった。翌年には「道元の冒険」と「表裏源内蛙合戦」の豪速球に圧倒された。さらに林芙美子を描いた「太鼓叩いて笛吹いて」、昨年の小林多喜二を描いた「組曲虐殺」と観てきた。どの舞台も素晴らしかったが、中でも「道元」「源内」「虐殺」の3作は、巧妙な作劇と絶妙なユーモアとで人の何たるかが鮮烈に描き出され、深く感動した。それまで、井上ひさしの小説もまともに読んだことは無かった。ひょうたん島やてんぷくトリオの座付き作者としての仕事は知っていたから、小説やステージも分かったような気持ちで予断、偏見のかたまりになっていたのだと思う。ところが、短期間のそれも僅か数本の観劇だったが、舞台を観れば観るほど井上ひさしという人の偉大さを実感させられた。見事な仕事。見事な生き方。最も信頼にたる日本人の一人だったとも思う。ご冥福を祈らずにはおれない。