2009/02/09

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

デュカプリオとケイト・ウィンスレットの共演となれば当然のように「タイタニック」が連想されます。その上にこのタイトルですから、てっきりシドニー・ポラックの「追憶」のようなラヴストーリーをイメージしていました。そんな気分の通り、流氷の海から生還した二人がめでたくゴールインしたかのように映画はスタートしましたので、この先の更なる困難苦難をレボリューショナリーな生き方で乗り越えて行く二人を描くのであろうと思いきや、何とレボリューショナリー・ロードとは二人が新生活を始める通りの名前なのでした。結局「タイタニック」のロマンチィックなイメージを前提に、ロマンティックさの欠片もない辛いお話を展開するわけで,なるほど、これはサム・メンデスの作品だったと納得しました。

サム・メンデスはデビュー作の「アメリカン・ビューティー」でアカデミー監督賞を受賞してしまった才人です。2作目の「ロード・トゥー・パーディション」もそうでしたが、人間の裏側を抉り出すのが得意です。例えば優しさに隠された蒙昧。快活さの裏の不信。強面に見え隠れする小心。そのような人物像を鮮やかにキャスティングして見せる。これが尋常でなくうまいのです。「アメリカン・ビューティー」ではクリス・クーパーが一躍脚光を浴び、大ブレークを果たしました。今回も、デュカプリオの友人夫婦をはじめ、上司、浮気相手のOL等々、脇を固めるキャラクター達はドキュメンタリー的な迫力と魅力に溢れた表情を見せてくれます。実に見事なキャスティングでした。中でも印象に残ったのはケイト・ウィンスレットとレボリュショナリーロードの優良物件を斡旋する不動産屋を演じたキャシー・ベイツでした。タイタニック同様にデュカプリオの良き理解者にして上品で優しい役柄とはいえ、かつて無いほど美しくて撮られているキャシー・ベイツの美人ぶりビックリしました。しかし、この美しさも伏線になってしまうところがいかにもサム・メンデスです。

細部に神経が行き届いた絵づくりと流麗な演出によるハイレベルな作品は隙がありません。センスもテクニックも一級で音楽の趣味も素晴らしいのですが、どうもこの監督の人間観には救いがありません。何と言うか、情と知の折り合いが悪く、私に取っては感心することはあっても感動できない監督がサム・メンデスです。

原題:Revolutionary Road

監督:サム・メンデス

製作:サム・メンデス、ジョン・ハート、スコット・ルーディン、
原作:リチャード・イエーツ

脚本:ジャスティン・ヘイス

撮影:ロジャー・ディーキンス

音楽:トーマス・ニューマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャスリーン・ハーン、デビッド・ハーバー、キャシー・ベイツ

2008年アメリカ
1時間59分
配給:パラマウント