2007/05/07

スパイダーマン3

製作費3億ドル(約357億円)なのである。映画史上制作費最高記録を塗り替えたのである。実質的に、客観的にも世界1の歴史的作品が世界最速で一般公開される5月1日。しかも、1日は映画の日で料金は1000円ぽっきり。当然初回に拝見するのが人の道ってことだが、都合でこのチャンスをものできなかった。残念。

次善の策として翌2日、夫婦50割引2000円と、仕事帰りの1号にもレイトショー1200円を奮発、3人で3200円という低コストで、出来たてほやほやの3億ドル作品を見たのである。このゴールデンウイーク、シャネルビルにも、贅を尽くしたミッドタウンにも出かけたが、3千円と引替えた3億ドルが最高の贅沢だったかも。

で、肝心の中味の方はと言えば、ゴブリンジュニアとの確執は一時棚上げ、友情は蘇ったが、叔父の仇の脱獄や仕事上のライバルの活躍など悩みは絶えない。その上いつの間にか、M・Jとも気持がすれ違ってしまい、こんな筈じゃなかった感に戸惑いと孤独感を深めるピーターの弱みに付け込むように、暗黒面の力を増幅させる寄生生物が忍び寄るのだった。という随分欲張りなストーリー展開。

超人的な能力を持つごく普通の平凡な青年、という矛盾したキャラクターにトビー・マクガイアがそれらしい魅力と説得力を与えて、スパイダーマンには他のアメコミのスーパーヒーロー達とはひと味違った、普通ぽい雰囲気が強い。キルスティン・ダンストの地味さ加減も、絶対悪というような単純な設定でなく、哀しくも人間的な動機が用意された悪役達にも普通っぽい。今回のサンドマン、役者が魅力的で大変によろしいのである。特にサンドマンは助演男優賞クラスの名演技。来年のオスカーには是非ノミネートしてあげたい。ゴブリンジュニアのジェームズ・フランコもいい。

ドラマ部分が重いのである。結構泣けるしっかりしたドラマ展開なのである。それをはねのけるように、スピード感と躍動感にあふれたスパイダーマンのアクションが炸裂して、ようやく種々の問題が解決される。観客の感覚も解放される。あーようやくスッとした。

しかし、最期の最期に、本当の解決に必要なのは力ではないよ、犠牲的精神と赦しなのだよという、ヒーローものにはあるまじき大胆な結論へと落とし込む。これはこれは、制作費世界1の名に恥じぬ風格の、何と堂々たる完結編であることか。

原題:Spider-Man 3
監督:サム・ライミ
原作・製作総指揮:スタン・リー
脚本:アルビン・サージェント
撮影:ビル・ポープ
出演:トビー・マグワイア、キルステン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、トファー・グレイス、ブライス・ダラス・ハワード
2007年アメリカ映画/2時間20分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント