2007/05/04

エリオット・アーウィット写真展

アーウィットの写真集「PERSONAL BEST」の中から、各界著名人にお気に入りのショットを選ばせ、それをベースに再構成したという、手の込んだというか贅沢な趣向の写真展。それでいて、誰が何を選んだかというような表示は一切排されている。写真家と観客への敬意と主催者の誇りが示された入場無料。

著名人を写した作品はどれも見事な瞬間と表情とが捉えられているが、展示された作品のほとんどは、市井の人々の日常的な時間と空間をスナップしたかと思わせるものだ。あきらかな「やらせ」と見えるものと、偶然にその瞬間をとらえた様に見える作品とがある。絵画的な計算や鋭い批評性に基づいた作品や作為が前面に出過ぎている作品も、実際はどうなのか知らないが、どの作品にも共通して、作為も偶然も超越した決定的瞬間というものが明らかに見て取れる。

犬のジャンプ、子供の眼差し、老人の横顔、何時、何処で、誰を撮っても、何を撮っても、そこには奇跡としか思えない瞬間が写り込んでいる。必要な時に必要な奇跡を演出して見せるエリオット・アーウィット。

シンプルで分かりやすく、ユーモラスで美しいが、しかし、どこか必ず、何?どうして、と思わせる謎めいた事物が入り込んでこちらの一方的な理解は拒まれてしまうのだ。何気ない写真に潜む大いなる力と、ミステリアスな魅力。

E・アーウィット公式サイト http://www.elliotterwitt.com/lang/ja/index.html