2007/07/18

直木賞 松井今朝子 

松井今朝子さんの直木賞はうれしい。
受賞作「吉原手引草」については、浅田次郎の選評が誠に当を得ている。

失踪した花魁の謎を追う、という始まりから、
吉原という特異な場所の文化、暮らしの細部に焦点を合わせ、
蘊蓄が蘊蓄を越えて物語をグイグイ押し進める。
次第に全体像がくっきりと浮かび上がってくる。
プロセスの醍醐味に鮮やかな落ち。

見事な語りのテクニックと構成の妙は
ぽっと出の新人には出来ない芸当だろう。
経験と研鑽に裏付けられた、目も手も高い大人の仕事だ。

この1年間せっせと読み進めた川上弘美と松井今朝子。
松井今朝子のハードカバーは全部集めたが、古本ばかり。
遅れてきたファンとしては後ろめたくもあったが、
唯一新刊で買った新作の受賞でそれも消えた。

川上弘美の芥川賞選考委員就任ともどもめでたいことなのだった。