2007/07/06

ゾディアック


「セヴン」で名を挙げたデヴィッド・フィンチャー、久々の原点回帰かと思わせたゾディアック。
60年代末から70年代にかけ、カリフォルニアに現われた連続殺人犯。ゾディアックと名乗り、犯行毎に暗号化した声明文を新聞各社に送りつける。警察も犯行を繰り返す男を追いつめることができない。アメリカの犯罪史上初の劇場型犯罪。ゾディアックと謎の解明に魅入られた男達の肖像。

当時のカリフォルニアの生活など知る由もないが、時代と風俗が入念に再現されているということは画面の隅々から明瞭に伝わってくる。巻頭、宵まだきの住宅街を写して、人々のさざめきに浮き立つような解放感、生活感が匂い立ってくるノスタルジックな描写が素晴らしい。その直後に無惨な犯行へと転調していくサスペンス加減もいい。画面は密度高く引き締まっている。役者もいい仕事をしている。だけど、なぜかどんどん面白くなくなるのはどうしたわけだ。

犯罪実録で、謎解きや追跡がメインだが、テーマはミイラ取りがミイラになるといった類いのもの。ジャンル的には文芸作品なのだ。役者も完全にそのつもりで演じている。指向性からいえば「セヴン」というより「カポーティー」方面なのだ。しかし問題はどっちを向いたにしても、えらく中途半端なこと。劇場型犯罪者の誕生を扱いながら妙に私小説的なのにも戸惑った。

原題:Zodiac
監督:デビッド・フィンチャー
脚本:ジェームズ・バンダービルト
原作:ロバート・グレイスミス
撮影:ハリス・サビデス
音楽:デビッド・シャイア X・コティーズ、ダーモット・マローニー、クロエ・セビニー
2007年アメリカ映画/2時間37分
配給:ワーナー・ブラザース映画