2007/07/23

金比羅宮 書院の美展

http://www.konpira.or.jp/event/2007_the_traveling_exhibition/index.htm

金比羅さんから書院10室を飾る襖絵を運び込み、原寸大で再現展示する試み。襖絵で取り囲まれた部屋の空間感や絵の関係性が如実に示される分かりやすさはあるが、現地の雰囲気を想像で補うには限度もある。

部屋は、応挙4室。若冲1室。岸岱3室、他2室という構成。

やはり応挙は良いのである。大きくて繊細。華麗だけど渋い。それに愛嬌がある。虎の間は、様々な姿態の虎を描いている。眼光鋭く身構えたり、様子をうかがったり、くつろいで寝入っていたりする虎たち。一応、虎と謳われてはいるが、こいつらどう観ても猫である。大猫。しかも可愛い。虎がいないので猫の写生で間に合わせた感に情状酌量の余地は有る。いかにも堂々としているところが並でない。とらねこの起源はこの時代か。

若冲は1室だけだが百花繚乱。濃密さに全身からめとられそうな、曰く言い難い空間が印象的だ。

岸岱は蝶々の乱舞する襖絵も良かったが、柳と鷺の大胆なあしらいが効果的な柳の間が面白い。ぐるり四面を取り囲んだ襖絵に、カメラが横にパンするように観ていけば、まあことは足りるが、岸岱は大柳の幹と枝葉を大クロースアップで空間の基本を設定し、岸辺を中景に、舞わせた白鷺を大ロングショットで捉えるという構成で見せる。なので当然視線は前後左右に揺さぶられる。岸岱は他の部屋でもこの視点移動の仕掛けを、好んで取り入れている。それが一番成功した柳の間。ちょっと偏執的でグロテスクな柳が、ミクロからマクロへと焦点距離を伸び縮みさせる細工とよく調和して、ダイナミックな空間に演出している。